高松高等裁判所 昭和31年(う)437号 判決
思うに貸金業等の取締に関する法律第七条の規定は、貸金業者は自己又は特定少数の者からの資金によりその業務を行わなければならないことを示したもので、貸金業者が一面に於て一般人からの預り金を為し、他面に於て金銭の貸付を業として行うときは、その業務の性質が銀行業務的性格を帯びるに至り、一般社会に著しい弊害を生ずる虞があるからこれを禁止することにしたものであることはその立法趣旨に照して明らかなところである。然るところ被告人太田両名は既に本件起訴の際その対象から除外された特定少数の親戚知人及び前記弁護人指摘の村松定一、長尾マサ子、森川正雄、徳本千代等からのみ資金の受入れをしただけではなく、資金獲得の方法として一般大衆に呼びかけ利殖の好餌を宣伝して広く一般から預金名下に金員の受入れをしたのである。今証拠に基きその経過を辿つて見ると、被告人太田両名は当初は七名の発起人その他近親の者達からの借入金によつて運営していたが、次第に営業地域が拡大するにつれ近親者又は特定知人からの資金の受入れのみではその運営ができなくなつたので、先ず昭和二十七年十月頃借入金或は貸付の諸条件を記載した営業案内書を印刷して会社に金借に来た人々にこれを頒布して一般大衆からの資金受入れの道を開き、更に昭和二十八年四月頃から高松市その他に順次数個の営業所を新設し、それぞれその営業所に数名宛の職員や勧誘員をおき、これ等従業員により一般大衆に会社は健実であり金利が月三分で一般銀行等に比し頗る有利である旨呼びかけしめて、原判決別表挙示の如く広く一般多数の者から預り金をしたものであることが認められるのである。かような場合に於て偶々その多数の中に前記村松定一等若干の親戚或は知人の間柄にある者も存在するとしても、同人等といえども被告人会社乃至は被告人太田両名に協力するという意味に於て資金の貸付を為したものではなく、太田等又は会社従業員等からの勧誘を受けて金利の好餌に誘われて預金をしたものであることが明らかであるから敢て一般大衆と区別しなければならないものではない。従つて前記若干の者達よりの金員の受入れを本件預り金中にともに認定したことは寧ろ当然であつて何等違法な認定ではなく、原判決には法律の解釈を誤つた違法も事実の誤認もない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)